特集「ローマ字の分かち書き」: 新三原則

(2019/05/18)

 分かち書きの実例を3月から5月まで続けましたが、試行錯誤の結果、どうやら新しく分かりやすい三原則が見つかりましたので、最初から新三原則でやり直してみます。

  • 分かち書き
    • (1) 文頭に置ける言葉は空白を前に置き、文末に置ける言葉は空白を後ろに置く
    • (2) 後ろに「だ」が置ける言葉は空白を後ろに置く
    • (3) 「は」「も」「に」などの助詞由来の部分は切り離す
  • ハイフン
    • (1) 三文字以上の漢字熟語は、結びつきの弱い箇所にハイフンを入れ、再帰的に二文字以下の読みにする
    • (2) 接頭辞、接尾辞はハイフンで分ける
    • (3) 助動詞「ます」はつづりが長くなるのでハイフンを前に置く

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。

 (1) の「文頭」を当てはめと、「親譲り」「無鉄砲」「小供」「時」「損」「して」「いる」が当てはまります。

親譲りの/無鉄砲で/小供の/時から/損ばかり/して/いる。

 (1) の「文末」に当てはまるものはありません。
 (2) の「だ」を当てはめると、「親譲り(だ)」「無鉄砲(だ)」「小供(だ)」「時(だ)」「損(だ)」が当てはまります。(3)に当てはまるものはありません。

親譲り/の/無鉄砲/で/小供/の/時/から/損/ばかり/して/いる。

 ハイフンを付けるとすれば、「無-鉄砲」が当てはまります。
 ローマ字文では次のやうになります。

  • Ayayuzuri no Mu-Teppou de kodomo no toki kara Son bakari shite iru.

特集「訓令議事録」: 「おほむね」の意図するところ

(2019/03/31)

 そへがきに「おほむね」といふ表現がありますが、これも議事録をみると、主に何を意図してゐたか分かります。

 そえがきは第1表・第2表に共通するものであるが,書き表し方の細目を定めたものである。どうしてもこの各項にもれるものがあるので,「おおむね」ということばを入れたわけである。

 漏れがあるのは認識してゐるが具体的には訓令に明文化しないといふことです。明文化しないといふよりも明文化できないことなのでせうか?

 はねる音の「すべて」はなくてもいいということだが,標準式で,b,m,pのまえでは「ン」にmを書く習慣があるので,これをnにするという意味で「すべて」を入れた。しかし標準式の人がそれでもmを書くという場合のために,「おおむね」を入れたのである。

 これは、かなり踏み込んだ発言だと思ひます。「mb, mm, mp」のつづりを意図して「おほむね」と入れたと明言してゐます。
 一般には、この「おほむね」は「tch」を意図してゐると言はれてゐました。原則だと「cch」なのですが、そもそも訓令第一表に「ch」で始まるつづりは定義されてゐないので、訓令第一表だけを使用する場合は、「cch」が使はれる可能性がない訳です。だから、訓令第二表の「ch」をあへて使ふ場合は「tch」にしても訓令第一表に迷惑は掛けません。
 一方、「mb, mm, mp」は訓令第一表の「nb, nm, np」と真っ向から矛盾する訳で、さすがに明文化できなかったのでせう。

特集「ローマ字の分かち書き」: 助動詞「ようだ」

(2019/02/09)

  • 分かち書き
    • (1) 原則として、辞書の見出し語は分かち書きの独立した単位とする
    • (2) ただし、接頭辞、接尾辞は分かち書きしない
    • (3) 活用語の見出し語以外の形に接続する助動詞、助詞は分離しない
  • ハイフン
    • (1) 三文字以上の漢字熟語は、結びつきの弱い箇所にハイフンを入れ、再帰的に二文字以下の読みにする。
    • (2) 接頭辞、接尾辞はハイフンで分離する。
    • (3) 助動詞「ます」は主観的表現にも関はらずつづりが長くなるのでハイフンを前置する

たしか罰金を出して済んだようである。

 まづ、辞書引きのために単語に分割します。

たしか/罰金/を/出し/て/済ん/だ/ようで/ある/。

 「ようで」は助動詞「ようだ」の連用形です。ただ、形容動詞と同じやうに「だ」がなくても独立性があるので、「よう/だ」と分かち書きします。また前の単語は過去の助動詞「だ」の見出し語の形なので、分かち書きします。

たしか/罰金/を/出して/済んだ/よう/で/ある/。

 ローマ字文では次のやうになります。

  • Tashika Bakkin wo dasihte sunda you de aru.

特集「訓令議事録」: 訓令第二表の位置づけ

(2019/03/31)

 一部の言はゆる訓令式派(訓令第二表否定派)による論調と違ひ、議事録では訓令第二表を非推奨にするといふ論調はないやうです。もちろん、一部の委員が心のなかではさう受け止めてゐたことは否めません。

 内容について説明すると,まえがきに第1表と第2表の適用について述べてある。第1表・第2表ともに使用してさしつかえないのであるが,教育上一定のよりどころとしては第1表によるというわけである。

 これによると、学校教育で訓令第一表を主体に教へ、パスポートで訓令第二表を原則とするのは1954年訓令の理念から掛け離れてゐません。強ひて言へば、外務省が訓令第一表によるパスポート名申請を最近まで受け付けなかったのは、訓令違反だったといふことです。
 ところで、パスポート名に関して注意が必要で、姓名の名は一代限りなので、本人が好きなやうにつづっても構ひませんが、姓名の姓は家族で同じものを使ひ、親子代々引き継がれるものなので、個人の主義主張だけで押し通す危険性も考へておく必要があるでせう。

特集「ローマ字の分かち書き」: 助動詞「れる」

(2019/02/09)

  • 分かち書き
    • (1) 原則として、辞書の見出し語は分かち書きの独立した単位とする
    • (2) ただし、接頭辞、接尾辞は分かち書きしない
    • (3) 活用語の見出し語以外の形に接続する助動詞、助詞は分離しない
  • ハイフン
    • (1) 三文字以上の漢字熟語は、結びつきの弱い箇所にハイフンを入れ、再帰的に二文字以下の読みにする。
    • (2) 接頭辞、接尾辞はハイフンで分離する。
    • (3) 助動詞「ます」は主観的表現にも関はらずつづりが長くなるのでハイフンを前置する

古川の持っている田圃の井戸を埋めて尻を持ち込まれた事もある。

 まづ、辞書引きのために単語に分割します。

古川/の/持っ/て/いる/田圃/の/井戸/を/埋め/て/尻/を/持ち込ま/れ/た/事/も/ある/。

 「持ち込ま/れ/た」は、「持ち込む」の未然形に助動詞「れる」が接続詞、その助動詞「れる」の連用形に助動詞「た」が接続したものです。助動詞「れる」は動詞と密着度が高いので、独立した単語といふ意識も低いと思ひます。この助動詞は分かち書きしません。
 接続助詞「て」と助動詞「た」も分かち書きの対象外です。

古川/の/持って/いる/田圃/の/井戸/を/埋めて/尻/を/持ち込まれた/事/も/ある/。

 ローマ字文では次のやうになります。

  • Furukawa no motte iru tanbo no ido wo umete shiri wo mochikomareta koto mo aru.

特集「訓令議事録」: すり替へられた長音符号

(2019/03/31)

 1937年の訓令定義で、最終答申のときは、「ô」だったのが、実際の訓令では「ō」になってゐたことですが、通説では事務的ミスとなってゐましたが、意図的に省庁がすり替へてゐたといふ記録が見つかりました。

原案には長音符号が「^」になっていたのを,各省の意見では「 ̄」にしたいということだったので,にして,それで了承したのである。

 個人的には「ô」であらうが「ō」であらうが、単純な日本語の音韻を表記するのに、「ou」や「oo」を使はずに、字上符を使ふこと自体がボタンの掛け違ひだと思ふので、どうでもいいのですが、公開の場で結論がでたことを、非公開で官僚がすり替へたのはどうかと思ひます。
 あへて、「ô」と「ō」のどちらかを選ぶとすれば、看板等のデザインを加味すると「ō」の方がいいでせう。街角で見かける意味不明の看板「KOBAN」だって、マクロン「 ̄」を使用すれば、「KŌBAN」と横棒一本で簡単に修正できます。「KÔBAN」だと専用のデザイナーに任せないと不自然になるでせう。その意味で文字を普及させるには理念だけはだめで効率性も必要です。
 1937年訓令のローマ字調査会は議論のなかで「ti」と「chi」の優劣にだけ時間が割かれ、「ô」と「ō」の優劣はほとんど議論にならなかったやうです。そもそもまともに議論をしてゐれば、字上符の存在そのものも議論の対象になったでせう。

特集「ローマ字の分かち書き」: 十三四という表現

(2019/02/09)

  • 分かち書き
    • (1) 原則として、辞書の見出し語は分かち書きの独立した単位とする
    • (2) ただし、接頭辞、接尾辞は分かち書きしない
    • (3) 活用語の見出し語以外の形に接続する助動詞、助詞は分離しない
  • ハイフン
    • (1) 三文字以上の漢字熟語は、結びつきの弱い箇所にハイフンを入れ、再帰的に二文字以下の読みにする。
    • (2) 接頭辞、接尾辞はハイフンで分離する。
    • (3) 助動詞「ます」は主観的表現にも関はらずつづりが長くなるのでハイフンを前置する

菜園の西側が山城屋という質屋の庭続きで、この質屋に勘太郎という十三四の倅が居た。

 まづ、辞書引きのために単語に分割します。

菜園/の/西側/が/山城屋/と/いう/質屋/の/庭続き/で/、この/質屋/に/勘太郎/と/いう/十三四/の/倅/が/居/た/。

 「十三四」といふ表現をローマ字でつづるのは悩ましい問題です。「十三または十四」といふ表現ですが、辞書には当然載ってゐませんし、全てを続けて書いても、意味を理解するのが難しいでせう。この場合は、「十三-四」とハイフンを挟むのが良いでせう。もちろん、数字で書くのもひとつの手ですが、ここでは、ローマ字で書くことを考へてゐます。
 「山城屋」は「山城-屋」で、助動詞「た」は続けて書きます。

菜園/の/西側/が/山城-屋/と/いう/質屋/の/庭続き/で/、この/質屋/に/勘太郎/と/いう/十三-四/の/倅/が/居た/。

 ローマ字文では次のやうになります。

  • Saien no nishigawa ga Yamashiro-ya to iu Shichiya no niwatsuzuki de, kono Shichiya ni Kantarou to iu Juusan-shi no segare ga ita.