助動詞「をる」

移転しました。

 「をる」の話題が出たので私も便乗しよう。「をる」と言へば助動詞、国文法で言へば補助用言の機能も備へてゐる。英語の試験で悩ましい完了形は「をる」を使へば理解しやすい。ただし東京育ちにはこの区別が伝はらないのが残念。

  • It has rained. (雨が降ってをる) - 完了相
  • It is raining. (雨が降りをる) - 進行相

 会話では、少し訛り「雨が降っとる」「雨が降りよる」と発話する。例へば、朝起きて郵便受けに新聞を取りに行くとき、地面が濡れてゐるのに気付いて「雨が降っとる」と言ふ。正に「It has rained.」だ。この場合、現時点で雨が降ってゐるかどうかは問題ではない。青空でも構はない。雨が降った状態が確認できたときに使ふ表現だ。そして学校や会社に行くときに「雨が降りよるけん傘が要る」と言ふ。これは「Since it is raining, I need an umbrella.」と言ふ意味だ。
 ところで、標準語では「をる」を使はないと感じるが、「ゐる」の活用形によっては「をる」が代はりに出現する。

  • 「雨が降ってゐる。」+「風も強く吹いてゐる。」↓
    • 〇「雨が降ってをり、風も強く吹いてゐる。」
    • ×「雨が降ってゐ、風も強く吹いてゐる。」
  • 「雨が降ってゐない。」+「風も吹いてゐない。」↓
    • 〇「雨が降ってをらず、風も吹いてゐない。」
    • △「雨が降ってゐず、風も吹いてゐない。」

 さて、標準語では、完了相と進行相とが明確に区別できないが、「〜てゐる」といふ表現は「〜て」が入ってゐる時点で、基本は完了相だらう。「〜て」の語源は完了の助動詞「つ」の連用形だから、さう解釈するのが自然だ。だから「雨が降ってゐる」と言へば、基本は「雨が降った」といふ出来事が確認できる状態を言ふ。それに文脈や副詞が付いて「今まさに雨が降ってゐる」といふ進行相も表はせる。ところで、標準語で、確実に「It is raining.」を表現したいとき、「今、雨が降ってゐる」「雨が降ってゐるところだ」「雨が降ってゐる最中だ」と工夫をするが、それでも的確な表現とは言へない。未だに「雨が降りよる」のやうな的確かつ簡潔な表現に匹敵するものは標準語では見付かってゐない。